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しまねを楽しみ、ミライへ繋ぐコラム

交交株式会社 浅井さん

島から始まるエネルギーの地産地消 目指すは“なつかしい未来”

日本海をフェリーで進むこと約3時間。冒険のような船旅の末に見えてくるのが隠岐諸島。

島根半島の沖合60キロに浮かぶこの離島は、その地理的特性ゆえに独自の自然、文化が受け継がれてきました。

いま、本土と送電線で繋がらない「離島ならでは」の再エネプロジェクトで、全国から注目を集めている地域があります。

それが隠岐郡海士町(あまちょう)です。

公共施設を中心に、屋根の上にパネルを設置して使う電力を自ら賄う太陽光発電事業は、自然環境を損なうことがなく、地域社会を持続可能なものにできる力を秘めています。

太陽光発電の潮流がメガソーラーから屋根置きパネルにシフトする今、持続可能な地域に繋がる海士町の再エネプロジェクトについて〈交交(こもごも)株式会社〉代表の浅井峰光(あさい たかみつ)さんに伺いました。

島根半島から約3時間、島影が見えてきた時はワクワクしました!隠岐諸島には、離島ならではの生態系や、独自の文化、伝統的な暮らしが今も受け継がれていると聞きます。 ここで再生エネルギー事業を始めたきっかけを教えてください。

海士町にようこそ!きっかけは、2020年に行われた「島の経済循環を可視化しよう」という調査です。

私は一住民として結果報告会を聞きに行ったんですけど、人口2,300人という小さな島なのに当時、年間で約3.3億円もの電気料金が島外に支払われていたんですね。

海士町の税収2億円(2020年当時)をはるかに超える金額に驚きました。

「これはいけない。このエネルギー問題…なんとかならないかな?」と思いました。

当時、同じように地域内の経済循環と島での働き口創出に関心を寄せていた大野佳祐さんと思いが合致し〈交交株式会社〉を設立。

海士町で実現可能な再生エネルギーを探りに探ってたどり着いたのが、今取り組んでいる自家消費型の太陽光発電事業でした。

再生エネルギーの選択肢は太陽光発電以外にも、風力や水力、バイオマスなどがありますが、なぜ太陽光発電を選んだのですか。

最初に思い浮かんだのは小型の風力発電でした。

まったくの素人だったので『風の谷のナウシカ』のように、島の緑の中に風車が点在する風景もいいなと思ったのですが、残念ながら風力発電はコストが高すぎて初期投資が地域の負担になるからと断念。

森林伐採など自然環境へのダメージが大きいメガソーラーも、選択肢から外しました。

片っ端から専門家やメーカーに問い合わせ、環境保全や地域の持続的な発展を考えて、最終的に辿り着いたのが小規模な屋根置きの太陽光発電。

2022年、お金が地域で巡る、エネルギーの地産地消を目指す再エネプロジェクトがスタートしました。

交交さんが掲げる太陽光発電事業に対するポリシーを教えてください。

私たちの太陽光発電に対するポリシーは次の5つ。
①屋根上太陽光に限定すること。
②自家消費型に限定すること。
③国産設備に限定すること。
④重金属フリーのパネルに限定すること。
⑤地域還元率を最大化させること。

まず、パネルを設置するのは建物の屋根が基本。

環境への影響を最小限にするため、農地転用や山林を切り拓く野立(のだ)ては行いません。

地域内循環を目指しているのに海外産のパネルを使うのはちょっと違う(笑)。

太陽光パネルも40年以上の耐久性がある国産のものですし、最終的に廃棄する時のことを考えて、重金属を含まない製品を選びました。

なお、屋根の形状がパネル設置に適していない施設については、やむを得ず野立てにしていますが既存の敷地内に収めており、島の厳しい環境にも耐えうるよう支柱を太くするなどの工夫を施しています。

現在、メガソーラーによる自然環境への影響がニュースなどでも取り上げられていますね。 その点、海士町での取り組みは自然環境を損なわないことが大前提であり、先見の明があったと感じます。

〈交交〉では、島の環境や社会を損なわず次世代に伝えることを大前提に考えています。

島の山林に降り注いた雨が長年かけて湧水となり、田畑を潤しながら海に注いで海藻や魚介を育む。

島の先人たちが大切に守り伝えてきた里山の風景を台無しにすることや、海を覆い隠すことはしたくありませんでした。

このままの豊かさ、美しさで地域の価値を次の世代に伝えたい。

そう考えたら選択肢は自ずと屋根上の小規模発電に絞られていったわけです。

今、海士町ではどのくらいの電力を太陽光発電で生み出していますか。

現在、海士町では13カ所で太陽光パネルが稼働し、年間で75万キロワットアワーの電力を生み出しています。

海士町内の電力需要1500万キロワットアワーですから、その5%を供給していることになります。

割合だけ見ると小さな数字に感じられるかもしれませんが、電気料金に換算するとかなり大きな金額です。

設置場所はフェリーターミナルやホテル、高校や介護施設、浄化センターや清掃センターなど比較的建物の規模が大きい施設から、学習塾や診療所、飲食店まで規模は大小さまざま。

ですが、どれも自家消費型。

屋根に置いた太陽光パネルで、それぞれの施設が使う電力の一部を自前で作っています。

“エネルギーの地産地消”ですね。

隠岐島前高校の太陽光発電は、生徒さんの発案でスタートしたと話題になりましたね。

隠岐島前高校では地域課題や地域資源について学び自ら考えるカリキュラムがあるのですが、そこで生徒2名(現在は卒業)が島のエネルギーに着目したのがきっかけです。

「学校の電力を自立させること、できそうじゃない?」という思いから生徒たち自身が考え抜いて出した結論が、太陽光パネルを屋根に設置して発電すること。

資金の一部も生徒たちによるクラウドファンディングで調達しました。

現在、隠岐島前高校の太陽光発電では教室の電灯や空調などの電力を賄った上で、年間15万円ほどを還元しています。

この収益をどんなふうに使うかは彼らに託しています。

学園祭などで使うにしろ、ちょっとしたことはできると思います。

長い目線で見て、地域に一番必要なのは教育。

卒業生が残した今後20年間入るこの収益を生徒自ら管理し、何が地域にとってベストな使い道なのか考える。

このプロジェクトを通して、そうしたマインドを育てていきたい。

島の将来を担う世代と共に考えていきたいですね。

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